首都大学東京3年住宅課題


昨日で首都大の住宅課題が終了。去年の課題をブラッシュアップして、新たな反省もありましたが、成果も上がったように思います。

去年に引き続き名作住宅を参照し、そこから得た学びをもとに住宅を設計する課題。

猪熊さんとB1Dの宮内さんという去年からの引き続きのメンバーに加え、山﨑健太郎さんという豪華建築家4人編成。

何を参照すべきかを建築家4人で議論して選んで行ったのですが、昨年の反省を踏まえると名作の定義が変わっていく感じがなかなか楽しかった。

誰がみてもほぼ解釈が同じみたいな凝縮された作品は排除され、いろいろな読み方が可能な作品が選ばれていく。但し、難解過ぎるとまた排除されるみたいなチョイス。

名作住宅10選は、去年からの引継ぎが、
坂本一成/HOUSE F
ル・コルビュジェ/ショーダン邸
アドルフ・ロース/ミュラー邸
レム・コールハース/ダラヴァ邸 

今年新たに加わったのが
西沢平良/板橋のハウス
アルヴァ・アアルト/カレ邸
アトリエワン/ミニハウス
ルイス・バラガン/バラガン邸
佐藤光彦/仙川の住宅
グレン・マーカット/シンプソン邸

ある作品を徹底的に参照してから設計を始めるというのは、先にひとつのゴールを見て、そこからプロセスを類推し、その仮説を追体験しながら、違う条件の中で違うゴールを探すという、非常に建築的学びが凝縮された設計手法だと考えています。

設計を行う時に、漠然とでもゴールを先に見据えることは大事で、仮にそれがあって、そこに向かって一直線に進んだとしても、条件が違うと全然思ってた通りにならないのが建築の面白いところ。

スタートとゴールから追っかけて真ん中で線を結ぶイメージ。時には脱線した方が面白いことも多くあります。

去年の学生や、教え子のその後を見ていると、漠然としたイメージはあるんだけど、どう実現したらいいか分からないで挫折していく学生は多いと感じます。

そういう時には、似た建築を参照して、図面や写真を徹底的に読み込んで、そこから自分なりに設計プロセスを類推することで、設計を先に進めることができるはず。

というのが設計する時に何かを参照することの本質です。

エスキスでは学生ごとの独自の視点を拾い上げ、さらにそれをディベロップさせるためには、どういう独自のスタディ方法をすべきかをかなり具体的に指示しました。
その上で言葉とスケッチなどで少しだけディベロップしてみせて、その作業が楽しくなっていく様子を実演するという方針。スタディしたくさせる取組でした。

そうしたスタディの楽しさの先に、自分がいいと思うポイントを発見し、さらにそれをディベロップするためにどうしたらいいかを考えようとする(けどつまづく)くらいまでは結構な学生が出来ていて、割と成功していたかなと。
後は独自のスタディ方法を編み出す学生がどれだけ出るか、なのですがそこはなかなか難しい。

リサーチの時点で抜けていた学生がうちのスタジオにいて、最初のエスキス見た段階で、これに最優秀あげられないと教師失格だと思っていたのですが
途中からもう1人女の子が追い上げてきて、これは逆転あるかなと思っていたその2人が、最後本当に決戦投票になる展開で、ちゃんと押し上げられたことに胸を撫で下ろしました。

もう1人の女の子は全く独自の構築方法で空間をつくろうとしたので、ゴールが見えないうちは相当苦戦したと思いますが
一旦解けてなくても、こんなものにしたいっていう最終的なイメージをつくってみたら?と言ったところ、それでだいぶ道が開かれたようで
最後まで苦しみながらも走り切っていました。聞いたら楽しい4で辛い6でしたと言ってましたがW

各々独自のスタディで取り組んで、結果として12選のうち、5人がうちのスタジオから選ばれたので、去年よりは成功したかなと思います。
熱心にサポートしてくれたボランティアTAの深和君(2016年八雲賞受賞者)のおかげでもありますが。

今年苦戦したのは、課題の敷地が広すぎることでフィットしなかったミニハウス、シンプル過ぎた仙川の住宅、あとは平屋に近いカレ邸
ミュラー邸、ショーダン邸、HOUSE F、は依然として好調で、加わった中からはバラガン自邸、シンプソン邸が好調でした。

最後の講評では、他者への興味をもっと持つこと、自分の知らないところでその他者は自分より頑張っているのだという想像力を持つこと、これができれば、1人で成長するよりも圧倒的に早く、学年全体で成長できるという話をしました。
これは先週飲んだ去年の教え子たちからの学びです。
まあでも今思うと、昔の自分に良く似た最優秀を取った学生への(あるいは昔の自分への)コメントだなこれ。

無事輝ける学年になりますように。


2018-05-16