設計から竣工まで4ヶ月という短さでしたが、無事「屋根型の住宅」を引き渡しました。
せっかくなので今回の仕事を通じていろいろな業界と共有できる点をいくつか上げたいと思います。
施主視点で設計のコンセプトについて触れると、子供が二人いる=3LDKという計算で単純にそういう家を買うと、子供が大きくなるまで下手すると10年近くは2部屋近く空き部屋になってしまうという問題。これをいかに解決するかというのがデザインの課題でした。
田の字にクロスする壁を屋根型に切り取っておくというのは、空間の記憶の継承という意味でも(⇒将来像)そういう解決としては有効だったと思います。
不動産的な視点で見ると、バブル期のマンションで、大手ディベロッパーが関わっているその当時の高級マンションが、つくりもよく、新耐震基準でできているので、非常にお買い得だということに気づきました。築年数も30年近く経っているので、当時の売値の4割程度で購入できたようです。最新の集合住宅のようにきっちりしていないけど、経済的に余裕があって変に遊んでいる部分があるので、リノベーションにも活かしやすいという点がありました。今回も大きなルーフテラスがあったり、斜めのハイサイドライトがあったりすることが、大きくプランニングに影響し、この住宅の楽しさをつくっています。
建築的な視点で見ると、既存の壁を壊すことと新しい未完の壁をつくる作業の中に発見がありました。
壁が未完成だと、分けることとつながることは表裏一体なものでなくなっていきます。どれくらい孔にして、どれくらい壁を残すと、居心地がいいのかがスタディのポイントでした。
また、壁を天井まで到達させないと、室内に煩わしく存在する梁型に対しても自由になることができます。
メゾネットの上下階で方法は違いますが、同じ「屋根型」というボキャブラリーの中で、分けることとつながることのデザインを、周辺(螺旋階段や3方バルコニー)との関係性に応じて使い分けた結果が素直に現れたと思っています。
天井まで収まっていない状態を共通項として、アーチ状の開口部にたどり着きました。
バルコニーはこの後デッキ工事をする予定ですが、建築関係の友人の家でもあるので、盛大に友人を集めてDIYすることにしています。新しい家をつくる楽しさを子供たちの前で見せれたらと思って。
最後に金額の話。もともと施主がいくつかのリフォーム会社に話を持って行っていましたが、そのどこよりも安く、そしてもちろんフレキシブルにできたという点を特筆させてください(笑)。今回はキッチンの設置階を変えるという他社にはない増額要素も盛り込んで、それでも下手すると2割近く安いという結果に。
もうはっきり言って営業広告費をバンバン使っている大手よりも建築家に頼む方が全然安い、ということを特にリノベーションの分野では実感しております。