【都市】ハノイ 2- 混沌の中の美しい調和


ベトナムの都市で特筆すべきなのはやはり交通じゃないかと思います。共産主義の国ですが、政治は何をやっているのかと思ってしまうほどに公共交通機関が弱い。旅行者の足は初乗り70円くらいのタクシーですが、庶民の脚はバイク。常にものすごい数のバイクがクラクションを鳴らしながら走っています。人々もバイクの上から物を買います。

そして交通量の多さからすると信号が少ない、あっても守る人が少ないのがこの国の面白いところ。この完全にアウトオブコントロールな状況で交差点を渡るにはどうすればいいか。信号に慣れている日本人には最初かなりハードルが高い。コツはゆっくり歩くこと。勇気を持ってゆっくりバイクの流れに足をつっこむと、一直線に走っているように見えたバイクが少しずつ譲り合ってぶつからないように避けてくれる。恐らくもし歩いている途中に急に方向転換したり、走り出したりしたらその瞬間に交通事故が起こるでしょう。人々が交通の流れを読んで、少しずつ譲り合って起こる見事な調和が、この混沌とした状況を支えているというところにベトナムの美しさを感じます。

ちょっと地方に車を走らせると、水牛や七面鳥がほとんど放し飼いのように転々としながら収穫の終わった田畑の雑草を食べていたり、市街の駐車場にも鶏が放たれて雑草を食べている。勿論動物たちが突如道に飛び出して事故が起こる恐れもゼロではないワケだけど、人間だけではなく、動物たちもお互いがお互いに寄りかかって成立している状況をよく見かけました。

見ていて非常に有機的だなあと感激しました。個人個人が自分の権利を主張することで、いろいろなことが禁止になるような世の中ではなく、個人個人が少しの不便を差し出すことで、もたれ合い成立する世界。アジアの多くの国に混沌とした状況は見て取れるけど、その先の調和が分かりやすく見て取れるのはベトナムならでは。勿論、旅行者がいい側面だけを切り取って見ているワケですが、近代化がもたらす制御が行き届いた状態によって僕たちが何を失ったのかを、ハノイは教えてくれる気がしました。


2014-10-25