【旅行】①鳥取~三朝温泉


独立後ずっとバタバタしていて久々の自転車旅に行ってきました。
行けそうな近距離は行き尽くしてしまった感があり、思い切って遠出して鳥取から島根まで走ることに。
4日間で300kmを超える長旅です。

神戸まで夜行で行って、そこからスーパーはくとで鳥取まで。
初日は鳥取から砂丘~倉吉経由で三朝温泉の75km。獲得標高も500m程度とほぼ平地なので緩めの設定。
しかし、いろいろ見ながら旅をしようとすると、1日100kmが限界ということがこれまでの経験から分かっており
鳥取着が10時すぎということもあって、無難な距離設定としました。

鳥取駅から城址のある旧市街へと走り出す。
道が相当悪い。
こういう旅の仕方をしていると、市街地の道のクオリティでだいたいその街の経済状況を判断するんだけれど
今までで一番悪かったのが岡山で、それに次ぐレベル。

★仁風閣/片山東熊 1907
どこの街に行っても城は確認するんですが、割と街中の平山城としては城下町もほとんどないし
天守どころか一切の建物もまともな城壁も残っていないのは
明治9年に鳥取県は島根県に編入されており、松江城で十分と判断されたためらしいが
背中に山を抱えて、片側にしか城下町を持たない構成も原因なのではないかと思う。
代わりのオブジェクトとしてあまり有難がられていないのがこの仁風閣。
一応コンドルの一番弟子、片山東熊の設計とされている。(実際に監督したのは鳥取出身の橋本平蔵氏)
フレンチルネッサンス風の洋館でありながら、瓦屋根という山陰らしさもあるキュートな建物だ。

エントランス部を見上げると、破風の中にペディメントがある意匠。
ペディメントは正面の象徴として用いられてきたけど、これを見ているとどちらも起源は一緒で
元は玄関に雨が落ちないような配慮だったんじゃないかと思えてくる。

中は明治後期の、和洋折衷な洋館。(突然床が畳だったりする。)
印象的なのはこの南東の庭側のサンルーム。
当初は1Fと同様いわゆるヴェランダだったようだが、改修の際に室内化されている。
眺めもよく白い空間に石垣や緑が映えて、古い空間を再編集された痕跡も感じられて本当に気持ちいい。
最近ではるろうに剣心の撮影に使われたとか。
コナンや鬼太郎で売り出す前にこういう地に足のついた場所をもっと大事にして欲しいなあと思う。

県も薄々それに気づいているのか、慌てて石垣が復旧工事中。
写真は国内唯一という丸い石垣。
そりゃまあ少ないでしょ、登りやすそうだもんね。。。

★鳥取県立博物館/日建設計 1972
仁風閣の対面に建つ鳥取県立博物館。モダニズム後期の良作である。
入って吹抜け+大階段があってその周辺に各室がまとわりつくシンプルな構成だが
細かい型枠を使ったり、はつって質感を大事にしたコンクリートの壁と
木の繊細な天井に風格のある重厚感のある建物だ。


印象的なのは1Fのカフェ部分。この天井なんか見たことあるなと思ったけど
上に講義室が乗っかっているために階段状になっているようだ。

段差には空調吹き出しが埋め込まれている。


全然見る予定のなかったところに魅せられたと慌てて市内からこぐこと10km。
なぜか少し登った先に砂丘が見えてくる。
砂漠そのものにはアフリカとインドで見てきたので真新しさはないですが、この松林と砂漠が重なる風景というのは新鮮。
さらに道を急ぐ。

砂丘の入口からの風景。かなりテンションが上がる。
写真家の植田正治が砂丘をレフ板に見立てたというもよく分かる。
よく見るとウォーリーがいる!


というわけで馬の瀬と呼ばれる壁の上までダッシュ!


丘の上に上がると結構な眼下に青い海が見える。
ありそうだけど、なかなか見たことのない風景。
砂紋も綺麗。


あまりのんびりしていられないので急な壁を斜めに下る。
あとで振り返ると思いっきり壁に痕跡が残っていて、ちょっと申し訳ない気持ちになるなど。
巨大なレフ板たる砂丘では風景の一部としての振る舞いが求められているのだと去り際に気づく。


そこから50kmほど見るものもなく海沿いを走る。
9号がバイパス化されていて自転車で走れなくなっている部分が多々あり弱冠遠回りを強いられる。
しかし旧9号沿いでは軒並み商店が閉店しており
道1本新設するだけで死にかける町もあったのだろう。
試しに寄ってみた小さな町の中心通りも、商店はほとんどなく
名残のようなガラス引き違いサッシが妙な風景をつくっていた。。


山陰はとにかく池や湖が海沿いに多いランドスケープ。
温泉地のある東郷池を回ってみるが、あまりパッとしない。
写真は湖畔にあった漁に使う小屋。


★倉吉市役所/丹下健三 1956
丹下健三初期の名作(旧都庁舎と同年)にして建築学会賞受賞作。
昭和30年代の市役所がまだ使えているというのは、
人口がそれほど増えなかったとか、建て替える経済状況にないとかあるんだろうけど
耐震改修もしていろいろと使いにくいことも多いだろうにまだ使ってくれているというのは
それだけでありがとう。という気持ちになる。
カメラを持って歩いているだけで、職員の方から来てくれてありがとうと声をかけられたが
こちらこそという気持ちでいっぱい。


内部。中庭形式の3F建てで、1Fは食堂や売店、宿直室など。
2Fと別棟にほとんどの機能が集約し3Fは市長室などがある。
天井の細かいリブが印象的だけれど、当初空調という概念がなかったのか
その辺りが全部後付けになってしまっている。


別棟的な議会室(左側)。ピロティと大階段という構成。
夕方でバタバタしていたので断らなかったけど、議会室も鍵がかかっていなくて普通に入れました。
コンクリートだけれど意匠が細かくて重厚感があり、
古くなってもなお古い建物としての良さを感じられる。


ついでに蔵の残る町あるき。山陰は赤い瓦が有名なのだけれど
赤い瓦に白い壁の蔵というのは珍しい。


一本橋の並ぶ水路。石の橋はいいけれど、コンクリートのものはだいぶ朽ちている。
こういう水路に柵がないのも街の豊かな規範。


もうひとつこの街特有の規範は2Fの窓の小さなベランダとも言うべき手すり。


倉吉からこの日の終着点、三朝温泉まで6kmくらい川を上り本日のゴール。
ラジウムの多い療養温泉で、和風の旅館が三徳川沿いに立ち並ぶなかなかいいところ。
17:40着で予定より20分早く着。

2日目につづく


2015-04-28