新建築2月号に昨年1月号から連載されている小見山陽介氏の「CLTの12断面」の最終回に富永が寄稿しています。
昨年後半の無垢材利用の活動の中から考えたCLTの正しい使い方について。
それぞれがたくさん抱えた問題に一旦目をつぶって書いた理想像ではありますが、
少しもののデザインと流通のデザインを考え直すだけで
CLTも無垢材も、大きな製材所も小さな製材所も、委託型林業も自伐型林業も、みんながハッピーになれる道はまだ残されていると思っています。
せっかくなのでこちらにもアップします。
質問1:現状、CLTの可能性および問題点は何でしょうか。
木材資源と流通の観点からみると,現状CLTの生産は,材の質に関わらず山を丸ごと伐採する皆伐施業と結びついています.この施業方法は,戦後の経済成長期に植林した木が十分に成長した現在,構造材としても使用可能な材も,そうでない材も丸ごと安価に買い叩かれてしまう可能性を含んでおり,経営的にも環境的にも全く山の持続性に寄与していないというのが最大の問題点です.一方で視野を広げると,これまで価値のつきにくかった手入れの行き届いていない=構造材や仕上げ材としては利用しにくい山も非常に多く,森林組合がきちんと解像度高く機能して,こうした山を環境に配慮した上で,計画的に施業してCLTに利用していくことできれば,現在約50-60億㎥あると言われる日本の木材資源の成長量分を適正に使うことが可能になっていくと考えます.
質問2:CLTのこの先の展望をどのように見ていますか?
質より量の問題になっていくべきと考えます.量の問題として捉えると、非住宅の施工床面積の6F以上の高層建築の割合は2割程度であり,高層化の先の市場は多くありません.逆に1-3Fの低層の割合は6割を超えます.ただ通常の1-2Fであれば,今後は国産の無垢材で十分対応可能な時代ですので,汎用性まで考えれば,設計手間の少ないギリギリ軒高9m高さ13m以内の2-3F建てを,燃えしろを使った準耐火建築として,長尺盤のCLTでつくるというのが,CLTの担うべき市場ではないかと考えます.また日本の森林の約半分は実は広葉樹であるので,燃えしろを前提とすると内側は節だらけの杉・檜でも,燃えしろ部分を担う仕上げは広葉樹材とすることが可能となります.これこそが短材を張り合わせて長尺盤がつくれるCLTの特徴を活かした森林資源の有効な利用方法であり,結果として従来の無垢材による構造材・造作材以外の森林利用につなげていくことが,膨大な森林資源ありきの建築業界と林業界の理想像と考えます.
考えるきっかけとなったのはこのプロジェクトでした。