最近取り組んでいる部活動の一つにこれからの日本の林業を考える会があります。中嶋健造さん率いるNPO自伐型林業推進協会のサポートメンバーがAndozaka COINで働いていることがきっかけです。
日本の林業がかなりヤバいということは実はかなり昔から言われてきました。原因はいろいろありますが概ねほとんどが林業界の制度不良です。
1960年代以降輸入が自由化された外材に対して、バブル期の材の高騰に甘えて、きちんとユーザーの需要に応えるための制度改革をしてこなかったせいで、2000年代に木材の自給率は20%を切るところまで落ち込みました。
2006年以降補助金がどっと注ぎ込まれたことで、さらに外材と戦うための競争力を上げる制度改革は遅れ、完全に薬漬け状態。
補助金やめてちゃんと改革しないと林業は死ぬけど、補助金やめた時点で死ぬ。簡単に言うとそんな状態にあります。
2010年に民主党政権が木材自給率50%を目指して森林・林業再生プランを策定しましたが、現在自給率は約30%。
*林野庁”木材需給表”から作成
ちなみに日本は農地が国土の10%であるのに対し、68%が森林です。しかも戦後の需要過多な時代にもきちんと植林したおかげで現在60億㎥の木材が山にあると言われています。
これは1960年代の約3倍の数字であり、樹齢50年を超え始めているので、これまでは集成材のラミナや合板としてしか使えなかった木が、構造材として製材が出来るくらいに太り始めている。
これが宝の山を抱えた日本の現状ですが、依然として林業の大規模な制度改革は進まない。では大きな林業でなく、個人で出来るような小さな林業に可能性があるのでは?と注目されているのが自伐型林業です。
簡単に林業のやり方について説明すると、現状の林業というのは委託型林業であり、委託を受けた伐採業者が大型機械で山をまとめて伐採する「皆伐型」の施行。
この方法は山は荒れるし、明確な需要があって切っているわけじゃないので、いい材も悪い材も樹齢にも関わらずまとめて伐採されてしまうって材単価が上がりません。
これに対して自伐型林業が目指すのは、自分の、もしくは借り受けた山に少しずつ林道をつくっていって、間伐しながら山の環境を維持しつつ必要な材を出していく「択抜型」。
(写真左)皆伐型林業が残す風景 (写真右)択伐型林業が残す風景
最終的には樹齢の大きい大径木が残って、その足元には自然の植生が戻っていくということで、ドイツではこのような林業を”近自然林業”と呼ぶそうです。
こっちにシフトしていけば、大きな投資はいらないし、農業漁業のように天候によって大打撃を受けることもなく、山の環境保全にもいい。
農業や観光業、製造業などとの兼業でも可能で、田舎暮らしの経済を支える基盤となりうる!という、これからの林業のあり方。
この小さなアクションから日本の林業と地方経済を変えられるかもしれないということで、日本財団からも注目を浴びているのがこの”自伐型林業”です。
僕ら建築の人間は、林業の一番大きな市場であり、密接な関係にある訳ですがこうした林業の現状など、恥ずかしながら正直よく分かっていませんでした。
一方で建築業界では集成材やCLTの利用による大規模木造建築実現のための法改正が進みつつあります。
これが現状の林業を助けるのかというと、実は山を丸ごと皆伐して集成材やCLTになるような材(ラミナ材)をいくら出しても山側にとっては儲けにはなりません。
ラミナ材を数少ないCLT工場へ運賃かけて運んで、手間かけて製材して現場に卸す時の価格を落とそうとすると、当然丸太の価格が落ちることになるからです。
持続可能な林業という視点に立つと、山の環境を維持していくためには合板や集成材、CLTではなくて無垢材を歩留まり良く(捨てるところを少なくして)使うべき!
というのが林業を盛り上げて山の環境を維持していくための結論のひとつです。
独立して以来、僕も意識的に”木”を使ってきました。漠然とした”木”。合板も集成材も総じて”木”と呼んで、よしこれからはCLTだ!と。。。
しかし、「何のために木を使うのか」という視点が全く抜けていました。
もちろん経済を回すことは大事だけれど、我々は限られた資源の中に(実際にはあふれているけど)社会を成立させる必要がある。
”木”を使っていたつもりでも、下手すると林業の役に立ってないし、皆伐が環境破壊に加担している可能性すらある。。。
つまり手段と目的の関係が逆転しているワケです。海外の山を買ってまとめて伐採して製材して大規模木造をつくるみたいなことが平気で起きているわけですが、それってそもそも木造建築をつくる思想と矛盾してやしないか。
CLTや集成材じゃないオルタナティブ(むしろ王道か)な木造を考えないといけない!
このことが僕が自伐型林業推進協会と関わるようになったきっかけでした。
自伐型の林家は全国でまだ数える程しかないのですが、択抜型で林業を行っている地域は現在もいくつかあります。手始めに今年の6月にその中でも代表的な地域である、吉野杉の銘木で有名な奈良県の吉野に視察に行きました。
②に続きます