新潟の学生にもらった元気が、人を選ばないといけないことによる精神疲労と3日間飲み続けた肉体疲労を上回ってきた感じがあるので、改めて少しだけ回想。
前代未聞な3日間の卒業設計講評。
初日は審査員の講演会(=審査員のことを学生に知ってもらう場)でそのまま学生も終電まで飲みに付き合わせ、審査員同士は3時まで飲んでラーメンで締めすっかり仲良くなる展開。
2日目のポスターセッションでようやく案と学生が一致。
その後に今度は2-3年生と審査員が持ち寄ったテーマごとに議論する場(=来年の卒業設計参加者を増やし質を上げるヒントを見つける場)がある。
夜は新潟大のOB会に参加。またしても学生を終電逃すまで付き合わせる。(OBがタクシー代を払って送る)
3日目AM 審査員が評価軸を明らかにしたうえで9案に絞り、再度学生に説明を受け、質問を交えつつ議論をしていく。
PM 賞を絞り込むため投票して、それぞれに応援演説、ダメなところを審査員どうしで議論。
人間性にまで話をして、最優秀+個人賞を決めていく。
最後の懇親会で東京に戻る終電まで、学生と議論しつくして、新幹線では審査員と議論しつくして東京へ。
建築(+人生)についての話が止むことが一瞬もない3日間でした。
学生の提案を総じてみると、地域価値再発見系ツーリズムに地域コミュニティを掛け合わせるようなテーマが内在した商業施設が多かったかなと思います。
その中で審査員が全員迷いつつもほぼ満場一致で最優秀に選んだのは、小林さんの”ほどかれる防火建築帯”。
秋田の大館の衰退しつつある目抜き通りの再開発ですが、元々しっかりした防火建築帯を形成する建物群をほどいていこうという提案。
既存の建築を構造フレームに戻したり、増えている空地にそのフレームが展開していくという脱構築的提案。
それで新しい楽しさをつくろうという積極的な提案でないので、言ってみたら“ダークファンタジー”なワケですが、どこが道路なのかどこが空地なのか分からない白ベースの模型に構造フレームが散らばっている風景に、審査員の想像を超えた、地方都市の今の学生ならでは前向きな諦めを持った、リアリティを感じました。
総じてもっとできるだろ?みたいな提案も正直多かったけど、あえて、やり過ぎない+誰でもつくれそうなやり方でつくるみたいな方法にも地方大学のリアリティと、新しい建築家の可能性を感じました。いますぐ提案に行って動かしてしまいたいみたいなものも。
個人賞は最後まで迷いました。
1つは秩父の洗い張り文化を掘り出して、屋台が密集したかのような商業施設をつくることで、街道に支配されていた都市軸を回転しようとした、社会のパラダイムを戻そうとする野澤さんの”通りをつなぐ洗張の風景”(深読みを含む)。
もう1つは、新潟市内の密に立っていた建物が減っていくことで表れてくる露出立面の観察からデザインのきっかけを探して、それを拡大したり操作を加えてその露出立面を見直すインスタレーション的な作品をつくろうとする中津川さんの”都市の横顔”。彼も設計能力がありながら大きな計画にしない新しい建築家像を持っていました。
甲乙つけがたかったけど、最後は簡単に答えを出さずに迷ったままでいることに躊躇しない人間の背中を押したいという欲求により中津川さんに。
当初評価されていなかった学生が、途中飲み会で距離を詰めてきたことが、少なからず評価に影響するところとか、米どころ酒どころの新潟ならではの卒業設計講評でした。
なかなか3日間はタフだけれど、地方大学は見習うといいところがたくさんあったかもしれないと思います。美味しいものやお酒を飲んで建築の議論をして元気をもらえるのはある意味新しいバカンスだったなと。
大学院で東京に来る学生も多いみたいなので、また近いうちに会えるのを楽しみにしています。