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【非常勤】3種のスタディについて(日大理工二年目を終えて)

もう長いこと非常勤をやっているような気がするけれど、日大は今年で2年目。自由にやらせて頂いて感謝ばかりである。今年教えていて特に気になったのは、図面を書くことの意味がだいぶ失われ始めているということ。みんな最後まで3Dや模型でスタディをして最終的にそれを切断するかのように図面を書いてくる
そういう時代になったのかもしれないと思う。ヴァーチャル世界の表現にしても、今の学生が享受していたものと、僕らが享受していたものは全然違う。だから教えるにあたり二次元と三次元を横断する感性が、大きく異なるのだという想像力を持つようにした。その上で全体講評の後の講義で僕が話したことは、なぜ図面を書かなければいけないかということ。なぜ図面を書いて検証しなければいけないか。(いまさらと思っても読んで欲しいw)

30年前は世界は常に二次元に置き換えられて表現された

それと前期教えた二年生が、少しずつ課題の条件が複雑になるにつれて急に自由な発想ができなくなったと嘆くケースを目の当たりにし、それが気になっていて、(似たような症状はうちの若いスタッフにも見られたので)まず分かりやすく建築のスタディには3種類あるということを伝えた。

1つ目は①可能性を限定するためのスタディ。課題でも実務でもまず設計は条件を明らかにして、その中でどんなことができそうか探りを入れるところから始まる。フィジビリティ (feasibility) スタディとも言う。
これは完全に技術。周辺リサーチがきちんとできることに始まり、ボリュームスタディがどんどんできるとか、必要面積を抑えながらブロックプランを書くみたいな検討。実務では法規をたくさん知っていないといけないし、法規の逃れ方もたくさん知っていないといけない。

2つ目は②可能性を広げるためのスタディ。 この条件ならこういうやり方がはまりそうとか、こういう考え方でつくってみたら与条件が書き換えられるんじゃないかみたいな、 いわゆるクリエイティブな楽しい作業。
①をある程度行った上ではじめて条件にあった可能性が開かれる。②の引出しもたくさん持っていなければいけない。 計画学も熟知していなければいけないし、構法に対する知識も必要。

3つ目は③可能性を検証するためのスタディ。②で自分が放り込んだアイディアが成立しているかをきちんと図面や数字で検証する。あるいはたとえば決めたのがボリュームの考え方だとしたら、それに続く動線計画とか平面計画をきちんと図面化して成立するか面積的に無駄にならないか検証する。そして問題があればきちんと②にフィードバックして考え直す
これが設計における”探求力”だと僕がずっと言っている内容であり、最終図面を見たらこれがどれくらい行われたかは一目瞭然である。
なんで3Dを二次元にしないといけないかという問題については、建築というのは絵だけでは成立せず、寸法(スケール)があってはじめて成立するから。この寸法のコントロールで、人を不快にも快適にもできるのだけど、それをコミュニケートする方法が、3Dオンリーの世界ではまだ成立していないため。とにかくスケールを身に着けないと建築はできない。
スケール教育がきちんと体に染みついている人は既に二次元化がバカらしいと思っているし、いずれAIがここは頭当たりますとか、ここ快適ですみたいなことを3D上で判断してくれるみたいな世界も来るかもしれない。

着想力とか構築力を教えようとする教員もいなくはないが。。

僕はレーダーチャートを使って設計能力を分解して教えようとしているけれど、実は設計課題で教員が教えられる、鍛えられるのはこの探求力しかないのだという話もした。あとはほとんど習慣と独学でしか身につかない。
*レーダーチャートについてはこちらをご覧ください。http://www.ht-at.com/blog/kadaihyouka/

改めてこの3種の相関関係である。基本的に①の可能性を限定しながらゴールに向かっていく大きな流れがある。その都度都度に②の可能性を広げるスタディが入り込んでいき、②を差し込んだら③の可能性の検証が必要となる。注意しなければいけないのは①だけでも設計はゴールできてしまうこと。一級建築士製図試験などはほぼ①だけで成立してしまう。設計課題では。それで君は何がやりたいの?みたいなことを言われることになる。②と③をたくさん繰り返せた案が、その条件と自分の放り込んだアイディアでしか生まれない建築の設計にたどり着くことができる。そのままいい建築の定義のひとつと言ってもよい。
② をやるには ① が足りてないとか、これ以上は ② がないと可能性が見えてこないみたいに共有したい。

常に ② の引出しを増やしておいた上で、まずプロジェクトが始まると ① で今回何ができそうかを洗い出し、引出しの中からフィットしそうなネタを ② として突っ込み ③ でそれを変体させていくみたいなあり方をひとつの設計のイメージとして持っておくとだいぶやりやすいはず。
理想なのは ③ の検証が、さらなる ② の提案につながってどんどんアイディアが補強されたり、逆に ③ の検証によって ② がもっとシンプルに研ぎ澄まされていくみたいなフィードバックが起こることで、これが設計の一番楽しい時間帯。

②をイメージしながらひたすら③に没頭する楽しさが建築設計である

1年生の後期から設計課題が始まる学生を見ると、当然、最初の方の課題にはほとんど可能性を限定する条件が設定されていない。なので必然的に②の能力ばかりが問われ、教えているのも②が大好きな建築家たちが多いので、②が上手な学生が持ち上げられ、潜在的に眠っている①が得意な学生が設計課題から淘汰されてしまいがちになる。しかし実務上は下手すると8-9割①の可能性を限定するスタディであり、②を差し込むことも①がきちんとできないとできない。(だからTwitterなどのインターネット上では常に①を職能としている建築人と②を職能としている建築人の争いが絶えない。)なにより②を差し込んだ後に③がきちんとできてないと②ができなくなって積む。今②が上手な学生はとにかくこの流れの中で③ができるようにしておいて欲しいし、①が得意そうだけど今はあまり評価がつかない学生も腐らないで頑張って欲しい。

そして最後に、たとえば認証形式のハウスメーカーと建築家比べたら②-③の量がどっちが多いかって言えば圧倒的に建築家になるワケで、楽しい=大変なのだ、ということを話した。我々がブラックと言われがちな理由はここにある。大変よりも楽しいを選んで生きている。後期に教えた学生は半年後にまた教えることになる。その時に③の楽しさに浸ってくれる学生になっていますように。恒例の記念写真(名前を憶えていられる自信がないので)。

写真見てはじめて気づいたけど男子多いな。。