Hiroki Tominaga – Atelier

【林業】林業と建築を考える旅④ ~製材所から流通を考え直す~

【林業】林業と建築を考える旅① 〜何のために木を使うのか〜
【林業】林業と建築を考える旅② ~吉野の森から学ぶこと~
【林業】林業と建築を考える旅③ ~7代前の先代に生かされている町~

吉野から戻った後は、自伐型林業推進協会への協力として、無垢材を活用するためのプロダクト提案や仕組みづくりの提案などをしていました。

ここまで読んでいただいた皆さんならもうお分かりかと思うんですが、林業が改善しなければいけない問題ってほとんど流通に集約されるんです。

材は既に山にあります。
林業国はほとんど先進国なので人件費もさほど変わりません。

山からいかに材を出すか(林道の整備)
それを需要に応じていかに無駄なく出すか(供給情報の集約)
製材所やプレカット工場を通じて、なるべく短い流通経路で安定した供給で現場に卸すか(輸送コスト削減)
この努力と品質の違いによって輸送費のかかっている外材に勝てばいい。

流通の問題なんです。

でドイツではフォレスターが伐採した丸太情報をデータベース化しているという話をしました。
自伐チームでも同様に、自伐林家が自ら山にある材の情報を各自で書き込んで、ユーザーに今山にどんな材があるか共有できるようにするシステムをつくればいいのではないかという話がありました。

既存の森林組合がこういうところをしっかり抑えてくれるとありがたいですが、しかしすぐになんとかなるものでもありません。

流通から見直す必要のあるこれからの林業の周りの社会で、じゃあどこがHUBになっていくのがいいのか

おそらく製材所になるんだと思います。

製材所ならハウスメーカーから設計者からDIYしたい人まで、あらゆるユーザーを山とつなぐことができる。

実際林業先進国に目を向けると
フィンランドでは木材生産者(製材所)が需要と供給のマッチングを行って、売買契約が成立したら林家に伐採してもらい、それを製材して現場に輸送するところまでを担っていると言います。
これこれ!これでしょー!なんて合理的なの!


 *表 ドイツNWR州における製材所規模とマーケットの関係(日本林業はよみがえる/梶山恵司)

日本にはで書いたように製材所の大型化が進まずに、海外林業先進国のような20万㎥を超える生産量を持つ大規模製材所が数社しかないんですが、その反面小さな製材所はフットワークが軽いはず!

実際ドイツでも表に見る通り、生き残っている小規模な製材所ほど小さな流通で回っているのが分かります。
具体的には家具やサッシなどの独自商品の開発と、注文住宅の注文製材をマーケットとしているようです。

実際設計者が工務店を選んでお願いする時、材の指定をきちんとしていても、工務店とつながった製材所が入って、その価格や仕様があやふやになってしまうことが多々あります。
もっとダイレクトに建主を山とつなぐには製材所と直接つながればいいんじゃないだろうか。

ちょうどそんなことを考えていた時に、木を使ったマンションリフォームをしたいという建主が現れました。
某木に強いハウスメーカーに見積もりを取ったけど、価格的にも計画的にもこんなもの?というよくあるお悩み。

これはいい機会。
新築が減って、リノベーションが増えている現状だからこそ、リノベーションで木をたくさん使う方法を考える必要があるのでは?

そのために流通経路を短くして、作り方から考えて、建主の使うお金の配分を、せっかくならなるべく山に回るようにできないか

挑戦してみることにしました。

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まず輸送費削減のためにどこの森から材を切り出すのがいいのか

実は面積で言うと東京都も4割が森林でできています。

主にあきる野市、青梅市、八王子市、奥多摩町、日の出町、檜原村を含む西多摩地区がその7割を占めるワケですが、元々かなりの林業地でした。
流通のことを考えたら多摩産材しかない。

まず自伐チームから多摩地方の自伐林家を当たってもらいましたが、乾燥の時間まで考えるとリフォームのタイムスパンに乗るか微妙ということが分かってしまった。(この供給体制の整備は課題です)


 *今回目指された流通

でも製材所ベースで探せば都内にも乗ってくれる所があるんじゃないか。
そう思って多摩産材を扱っている東京の近くの製材所を調べ、気になったところに電話をかけ、会いに行ってみることにしました。

新宿から1時間15分。五日市線の武蔵増戸駅近くの沖倉製材所です。(実際はもちろん自転車で行きました(笑))

沖倉製材所に行きついたのは、多摩産材を扱ってることはもちろんですが、製材所なのにホームページがかなりしっかりしていて、これは流通を変えてダイレクトにユーザーとつながる意識があるに違いないと思ったことと、武蔵五日市の先の都民の森にしょっちゅう自転車で走りに行くので場所柄、馴染み深かったことが大きいです。

話がそれますが自転車をやっていると檜原村の近くに材木屋をたくさん発見したり、埼玉の飯能のすぐ近くに西川材という木材の銘柄を発見したり、森を近くに感じられることも、もう少し森との距離を縮められるんじゃないかと思うきっかけでした。

沖倉社長に製材所を案内してもらい、製材の工程の説明を受けました。工場の裏にはたくさんの丸太が積んであり、多摩産材であることを示す多の文字が刻まれています。

製材の工程としては


・まず皮を剥ぎます。


・ざっくり材を切り出します。


・乾燥させます。(急ぐ場合は端材をチップにしてボイラーを回し、乾燥機を使います。)


・乾燥材をさらに製材します。


・プレーナーをかけて仕上げ(材による)

という流れです。

単なる製材だけでなく、フローリング材の加工や、幅はぎ材の制作も工場でやっていることが分かりました。
これはいい。林業先進国ではとにかく製材所が単に材を卸すだけでなく、ユニークな製品をつくることで生き残っていっています。

事務所で打合せて、多摩産の材でどんな木のどんな仕様でどんな寸法の材ならいくらで出せるのか。どういう材なら歩留まりがいいのか。を教えてもらいます。

扱っている樹種としては主に杉と檜。やはり檜の方が1.5倍くらい高いし香りもいい。ただ杉には源平といって赤い部分と白い部分があって大量に使う分にはのっぺりしない豊かな表情がつくれる。

話しているうちに木の強度をそれほど頼りにしない作り方で材寸考えれば、歩留まりを上げる方向で材の価格を下げられることも分かってきました。方針は固められそうな感じに。。。

多摩全体で300あった製材所も今は30しか残っていないそうです。儲かっていたバブル期で頭の固まった林業者が多い中、沖倉さんは柔軟に対応して商売を考えている人。東京の森。なんとかしたいっすね、と盛り上がって製材所を後にしました。

次回は設計編。実際に設計でぶつかった問題の話です。